アート思考が重要だということが分かったけれど、身につくまでに時間がかかるんじゃ、日々の仕事に生かせないじゃないか。
そんな悩みの声が聞こえてきそうですので、京都大学が発案した「アート思考のフレームワーク」をご紹介します。
本当は、じっくりと学ぶことがいいとはいうものの、非常にわかりやすいフレームワークです。
身近な問題を、まずは「アート思考のフレームワーク」にあてはめて考えてみることで、ちょっとずつ「アート思考」を身につけていってはいかがでしょうか?
京都大学発案のフレームワークはシンプル

以前の記事にも書いたように、常識や先入観から抜け出せずに問題に対峙したとき、論理的思考や批判的思考だけでは解決できないこともたくさんあります。
需要なのは「正しい問いを立てることができる洞察力とユニークな視点」です。
そうはいっても「洞察力」や「ユニークな視点」という曖昧なものを、どうやって身につけたらいいのでしょうか。
そういった悩みを解決するために(おそらく)発案されたのが、京都大学初のフレームワークです。
偶然ですが、僕と知人で立ち上げた新しいウェブサービスも、この「アート思考のフレームワーク」に当てはまっているように感じました。
構成は非常にシンプルで、以下の5つの手順でものごとを捉えていきます。
「1,発見」「2,調査」「3,開発」「4,創出」「5,意味づけ」として、ビジネスシーンに応用できます。
「発見」ステップ
自分の主観や興味、感性に基づいて、「おもしろい」「美しい」「価値がある」と感じるものを見つけることから始めます。
あくまでも「自分の主観や興味、感性」に基づいて良いので、ビジネスに直接関係なくても構わないそうです。
僕の場合は、経理の仕事に対しては音楽やプログラミング開発、逆に音楽の仕事であればウェブ開発といった、自分にとって「面白い」と思うものを当てはめて考えてみました。
正直なところ、脈絡がなさすぎて意味がないんじゃないか?と思うこともありますが、それでもいいと言われています。
「調査」ステップ
自分の価値観について、着眼点が独創的かどうかを検証していきます。
もっとビジネス的に噛み砕くと「競合調査」になるのではないでしょうか。
論文を書いたことがある人であれば(大学卒業の人は全員ですね)すでに存在する論文の調査を行いましたよね。
これと同じことを、「自分の価値観について、着眼点が独創的かどうか」を検証するのです。
音楽業界に対する問題解決としてウェブ開発という興味をあてはめたのであれば、その業界の問題に対応するためにウェブ開発という手法が使われていないかを調査するのですね。
「開発」ステップ
自分の着眼点をビジネスシーンへ応用していくにあたり、サービスや事業がオリジナルなものになるよう、さらに検討・検証を進めていきます。
「調査」ステップの深堀と発展と言えるかもしれません。
完全に一致する問題解決方法は存在しなかったとしても、似たような方法はすでにあることが多いでしょう。
その既存の方法との違いを作るにはどのような切り口が必要か…?そういったことを深掘りしていくステップです
「創出」ステップ
アイデアを実際のビジネスプランへアウトプットしていきます。これまで検討・検証してきたアイデアのイメージをもっともっと膨らませ、具体的な内容へ落とし込んでいく作業です。
そして、実際にアウトプットイメージ(作業プロセスだったり、業務方法だったり)に落とし込んでいきます。
ここで重要となるのは、「正しい答え」ではなく「自分なりの答え」を追求する必要があるそうです。
完璧なビジネスプランをいきなりつくらなければならないということも、今までの方法論とは異なっていますね。
ただ、こういった「アート思考」を実務で使うとなると、上司にも「アート思考」を学んで欲しくなりますが…。
「意味づけ」ステップ
オリジナルのアウトプットをほかの人が評価できるように、意味を言語化します。
検討してきた内容や目的をわかりやすい言葉へ変換し、ほかの人からフィードバックをもらいましょう。
ある意味、ここについては既存の思考法から導き出されたアウトプットと同じですね。
フレームワークを使えるようになればいいか?
フレームワークはただの「枠組」でしかない
残念ながら、このようなフレームワークを使えるようになれば安泰…とはいきません。
「アート思考のフレームワーク」のなかで一番重要なのは「発見」のステップです。
目の前になにかしらの出来事があったとしても「だから何?」「そしてどうなる?」という疑問が浮かんでこないようだと、手も足も出ません。
つまり、フレームワークとして5つのステップを知っていても、一番肝心の「発見」ができなければ、この「枠組」を使うことすらできないのです。
フレームワークを使えるようになるのではなく、初めのステップの「発見」をいかに増やすか…こういった姿勢が非常に重要になります。
ベースとなる知的体力は同じ
いままで、各ステップでみてきたところで「調査や検証」「言語化によるアウトプット」などは、「アート思考」独特のものではありません。
むしろ、既存の論理的思考や批判的思考でも非常に重要な、ベースとなる能力です。
要するに、この「アート思考のフレームワーク」を小手先だけで使えるようにはならず、結局のところは「論理的思考」「批判的思考」を学ぶ際に身につけた(もしくは学生時代から積み上げてきた)能力が応用されるわけです。
そういった観点から言えば、既存の思考法をしっかりと学ぶ価値は、まだまだ十分にあると言えます。
アート思考を身につけたらどうなるか。

既存の思考法で対応できない問題に対処できる
「正しい答え」を導き出す思考法の具体例として、論理的思考や批判的志向があります。
これらの思考法は「一つの答え」に辿り着くというスタンスをとっていますので、自分よりも優秀な人がいれば、より良い答えが導かれてしまいます。
当然にAIやビックデータを駆使したテクノロジー企業にも敵わないでしょう。
そもそも、新しい現象が出てくるたびに「正しい答え」を導き出していってはキリがないでしょう。
これからは技術に進歩や複雑さがものすごいスピードで私たちを襲ってきます。
そんな世の中でうまく生きていくためには「正しい答え」を出す技術ではなく、「自分なりのものの見方を持つ」ことが重要になるのです。
激動の時代をタフネスに生きていける
日本ではあまり感じないかもしれませんが…、ビジネスの現場でもAIやロボットが台頭してきています。
多くの仕事が置き換わったり、するのも時間の問題でしょう。
AIに置き換わらずとも、人件費の安い国の単純労働者にアウトソーシングされることは容易に想像できますね。
人間的な思考や問題発見力は、現時点ではAIや単純労働者には難しいと言われています。
もちろん「アート思考」を学んだからといって、すぐに効果が出てくるわけではありません。
そして、一生安泰というわけにはいかないでしょう。
それでも、自分を常にアップデートしていくことは、非常に大事なことです。
これからの時代は、答えを引き出す力以上に「正しい問いを立てることができる洞察力とユニークな視点」が必要とされています。
「変動性」「不確実性」「複雑性」「曖昧性」に富んだ世の中を生きていくには、こういった「アート思考」が重要なのです。