どうも、やべっちです。
先日「医療費の伸び、子どもが75歳以上の4倍に」という日経新聞の記事について、自分なりの簡単な考察を付け加えてツイートしたところ、思いのほか反響があったので記事にしようと思います。
医療費の伸び、子どもが75歳以上の4倍に
こんな見出しの記事でした。
日経記事のウェブはリンクを貼っています(有料会員しか見られないかも)が、ペーパーでも同じ記事がありました。
新聞に限らずニュース媒体では、見出しのインパクトが大変重要です。もちろん、僕の書いているこのブログも見出しが重要です…
先ほどの見出しを見ると、どんな印象を受けますか?
ぱっとみて「国の医療費負担増加って、高齢化じゃなくて子どもが原因なのかな?」なんて思ってしまいそうな見出しではないでしょうか。
僕なんかは、子育て世代なのでよくわかります。
最近は、「子どもの医療費無償化の恩恵を享受すべく、不要不急の病院受診が増えている」という話も聞きますからね。
世間一般的にも、このような考え・意見って蔓延っていると思います。
で、そんな「子どもの医療費無償化の恩恵を享受すべく、不要不急の病院受診が増えている」という考え・意見を心の(頭の?)片隅に持っている人が、先ほどの見出し「医療費の伸び、子どもが75歳以上の4倍に 」を見るとどう思うでしょうか?
そりゃ「国の医療費負担増加って、高齢化じゃなくて子どもが原因なのかな?」とかいう意見を容易に持ちやすく、これが飛躍して「子どもの医療費無償化が国の財政を圧迫しているんだ!」という意見につながる危険性をはらんでいます。
果たして本当にそうでしょうか?
医療費負担の本当のインパクトは?
たしかに、見出しをぱっと見ただけでは、よくわかりません。
というか、いかにも「子育て世代が財政を圧迫している」という意見を持ちかねません。
本当でしょうか?
先の記事には、2つのグラフが添えられていましたので、ここで紹介します。
(ウェブ版とペーパー版の両方に掲載されていました)
それぞれのグラフについて「75歳以上伸び率は低い」をグラフ1、「子どもの受療率が増えている」をグラフ2として考えてみましょう。
グラフ1を見るに、なるほど確かに子ども(0〜14歳)の医療費は2000年度から2016年度の16年間で140%に増加しています。そして高齢者(特に75歳〜)の医療費は同期間で110%に増加しています。
よって、見出しに書いてあることは、嘘ではなさそうです。
そしてグラフ2を見るに、子どもの受療数は上がっているが、高齢者の受療数は下がっているように見えます。
つまり、見出しにあるように「医療費の伸び、子どもが75歳以上の4倍に」を『現実にする』ためのグラフになっています。
グラフだけでは見えてこないことがある
グラフ1の右側には、医療費実額が書いてあります。
気をぬくと見落としてしまいそうですね(新聞を斜め読みするくらいだと、見落とすと思います)。
それを見ると、医療費実額の推移は伸び率と実額を割り戻すことで算出できます。
そうすると、
■子供(〜14歳):11.4万円→16万円
■高齢者(75歳〜):82.7万円→91万円
ということがわかります。
随分と印象が変わりますね。
さらに、人口(2017年)を調べると、
■子供:1580万人
■高齢者(ここでは65歳〜):3459万人
です。おそらく、グラフ2で示している2002年と2017年という期間を考えると、2002年よりも子供人口は減り、高齢者人口は増えているはず。
冷静に考えると、
■子供の医療費は伸び率は大きいが、実額で見ると5万円弱の増額
■高齢者の医療費は伸び率は小さいが、実額で見ると8万円弱の増額
■子供の受療率は上がったが、人口は減っているはず(そもそも人数は高齢者の半分弱)
■高齢者の受療率は下がったが、人口は増えているはず
ということが見えてきます。
すると、はたして
「国の医療費負担増加って、高齢化じゃなくて子どもが原因なのかな?」
「子どもの医療費無償化が国の財政を圧迫しているんだ!」
ということは、一概には言えないのではないか、と思うのです。
はたして、ここまで読み解けている人がどれくらいいるでしょうか?
資料を読み解く力が必要だ
もちろん、マスメディアは、それぞれ思想(思惑とか考え方と言い換えてもいいと思います)を持った上で、情報を発信します。
だから、今回紹介した日経新聞の記事については「子育てを終えた壮年〜定年前の世代に向けて、”国の医療費負担の増加は子育て世代のせい”」というメッセージを伝えたいがために、やや恣意的(またはメッセージ性を持って)に書かれた可能性はあります。
よりじっくり考察をするなら、グラフ1については「伸び率」ではなく「実額」で示すべきですよね。
もしくは、新聞記者に統計リテラシーがないのかもしれません。
だから、新聞がに書いてあるから、というだけで、鵜呑みにするのは危険かもしれませんね。