「モノより思い出」というコピー
某自動車会社の超有名な広告コピーです。日産ですね。
「もはや大量消費の時代は終わった。モノそのものではなく、モノを使っている生活を提供することが大切なんだ」
そんな、今では主流のマーケティングの考え方の発端になったコピーかもしれません。
もちろんそれ以前にだって「そうだ、京都行こう」なんで有名なコピーはたくさんあるよね。
ただし、ここで取り上げたいのは、広告コピーではなくて「若者がモノを買わなくなったのか」ということです。
「モノを買わない若者」は誰だ
ここでいう、若者というのは、昭和末期〜平成初期に生まれた世代です。つまり、僕たちのこと。余談だが、もうすぐ平成が終わるので、「昭和生まれ」ってのが僕にとっての「大正生まれ」みたいな時代がもうじきくるんだよね。
「若者がモノを買わなくなった」と言っているのは、今のオジサン・オバサン世代(と言っては失礼かもしれないが)だ。だいたい、40〜50歳というところだとおもう。
ローンを組んで車を買うのがいっちょまえだ!
ボーナスは腕時計に全額つっこむもんだ!
クラブで遊んだこともないのか!
というようなことを、言ってくる世代です。
いや、もう少し上の世代からも「若者はモノを買わない」と思われているだろうけど。
もしかすると「モノを買わない」のではなく「お金を使わない」と思われているのかもしれないですね。
たしかに、昔と比べると、「お金をかけずに快適な生活が送れるようになった」と思う。親世代からもよく言われます。昔はUNIQLOもGUも西松屋もなかった!と。
僕は都市部(というか下町)に住んでいるから、車は必要ないです。
駐車場が2〜3万円するような世界です。日常の買い物は、徒歩10分で事足ります。重い荷物になるような買い物なら、アマゾン・楽天・ロハコ・ネットスーパーあたりで調達すればなんとでもなっちゃうよね。
さらに、タイムズのカーシェアリングが徒歩10分圏内に20台近くあり、レンタカー屋も3件以上あります。
そんな生活で、果たして車がいるだろうか?
腕時計…
確かに、ロレックスはかっこいい。
でも、国産時計メーカーもかなりいいものを出している。
そして、スマートウォッチなんかもある。もちろんApple Watchなんてものがその代表だ。今では、テレビに出てくる社長さんだって、ロレックスはしていない。Apple Watchをしているのを見ますよね。
つまり「ある程度の年齢になったら、それなりの時計をしなければならない」という常識がなくなってしまったみたいです。
そんな世の中では、よっぽどの時計好きか、何かでなければ時計にはお金を使わないんだとおもう。
(もちろん、何かのお祝いで時計を贈られるということはあるかもしれないけど)
「買わない」ではなく「欲しいと思わない」
今まで書いたような、とても簡単な話からも「欲しくないから、別に買わなくてもいい」という発想が生まれてくることは容易に想像てまきます。
きっと、こういう考え方、ある種のリーズナブルな考え方をする人が、若い世代に多いから「モノを買わない」のかもしれません。
「これにお金をかけるくらいなら、他のことにお金をかけるよね」
という発想だです。
そこで使わなかったお金が、別の消費に回ることもありうるし、「将来のいざという時のために、お金を貯めておこう」という考えに行き着く場合もあるでしょう。
ただ、この「お金を貯める」については別の記事でも紹介します。

「食べる通信」がイケてると思われるワケ
2019年2月放送の『カンブリア宮殿』で「食べる通信」というものが取り上げられていました。
「食べる通信」とは、「食べ物付きの情報誌」というものです。
全国のこだわりの食べ物を、生産者のドキュメンタリー的な情報誌と一緒に受け取れるというサービスです。
情報誌というと、ANAの機内誌「翼の王国」のようなカッコいいテイストで、生産者の生き様が大迫力で載っているそうです。
そこに、「付録」としての食品がついてくるという仕組みですね。
さらに、購読者(消費者)と生産者をつなぐ仕組みもあります。
Webページで調べてみたが、確かに「面白い」そして「購読してみたい」と思わせる仕組みがよくできているな、と思います。
ただ、牛乳が2本(せいぜい2リットル程度だろう)で2,000円を超える購読料は、いささか高い気がします。もちろん「情報誌そのものの良さ」を含めれば、多少なりとも割高になることは考えられるけど、高級スーパーで購入するよりも、やはり高いよね。
それでも、購読者はいるみたいです。
「モノ」にお金を払うのではない
正直なところ、おいしい牛乳を買おうと思ったら、成城石井や明治屋に行けば手に入るでしょう。近所になければ、通信販売で購入はできます。しかも「食べる通信」よりははるかに安い値段で。
でも、そういうことじゃないんですよね。
これは『カンブリア宮殿』でも言われていたけど、生産者との繋がり(マーケティング的に言えばロイヤリティ)のために、お金を払っているのかもしれません。
ただ「モノがいいから」だけではなく、それ以上の「なにか」に価値を見出してお金を払っているのかもしれません。
そういうことにお金を払っている人が一定数いるんです。
そして、これらに興味を持ち「ファン」になるのは、僕らと同じ「若者」です。
はたして「若者がモノを買わない」は本当だろうか、と思ってしまいます。
おそらく「過去の生産・消費モデルに基づいた考え方をしている立場の人のモノサシ」では買った場合は、そうかもしれません。
この「モノサシ」で商品プロモーションをしている立場からすると「若者がモノを買わない」は本当だと思います。